ガクアジサイ

ガクアジサイ
No.669 ガクアジサイ
読み人知らずの詩歌に胸を打たれることがあるように、そこに置いたのが誰なのか気に留められることもない“活(い)け人知らず”の花になぐさめられることがあります。仕事柄、撮影機材を積んで高速道路をひた走る3時間超えの移動もたまにありますが、そんな時のサービスエリアは夜明け前の時間帯であれば特に、灯台のような存在です。トイレの手洗い場の鏡に映った疲れた表情の自分に苦笑しつつ、目線をうつした先で花瓶に活けられたにこやかな花に出会うと眠気が飛ぶような清々しい気分になります。ここで日々清掃作業をしている人の庭先に咲いていた花なのか、ここまで持参して飾ってくれたことに道中の無事を願ってくれるその人の優しさが伝わってくるようです。誰に認められようというのでもなく、見返りを求めずに積む善行はガクアジサイのようにさわやかでまたどこかで会いたくなるようなものです。2015年6月30日

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