キキョウ

キキョウ
No.670 キキョウ
夏から初秋と、季節をまたいで思い出の多い花です。水桶を持ちながら花や団子を抱えてノロノロと家族で向かった集落の一角にある墓地。高校生の頃まで、盆花は買う物ではなく家の庭先から摘んでいくものだと当たり前に思っていました。大学生となって東京で暮らすようになりましたが、写真の材料を買うために新宿の居酒屋でバイトに明け暮れていた時期には帰省する余裕もなく、親戚が集まる実家でのお盆を遠く思い出すだけでした。しゃれたことが何も無いように思っていたふるさとの暮らしが、意外にも豊かなものなのかもしれないと思えるにはまたずいぶん時間を隔てますが、ここに来てやっと私も花の趣が理解できる年齢になってきました。おもしろいことに今見る桔梗は、若い頃に見た花よりたくさんの物語を語っているように見えるのです。
2015年7月19日

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