ウメ

309ume

No.329 ウメ
まだ10代の頃、東北新幹線さえ開通していなかった時代の話です。進学が決まって「写真の世界で生きていく」と、青雲の志を抱いて上京した私。不動産屋と電話のやりとりだけで決めた激安のアパート。それなりに淡い期待も抱いていましたが、たどり着いたのはリアルな「神田川」の世界でした。輝く猪苗代湖と、堂々とした稜線を持つ磐梯山のはざまで育った私には衝撃の連続でした。新宿の高層ビル群を間近に仰いでは、世界のど真ん中で活躍できるような大きな錯覚さえも楽しんでいました。浮足だった春でしたが、慣れない東京への緊張感も相当だったのでしょう、川沿いに咲いていた梅の暖かさが今でも忘れられません。

page top