
No.336 ヤグルマギク
「矢車菊」。月夜の晩のような青色は冷たい宝石のようだし、おだやかなピンクは漂う空気を一瞬にしてやわらかくします。ヨーロッパ原産で、麦畑やトウモロコシ畑のかたわらで野草化するので英名は「コーンフラワー」。春先に咲きます。この花が持つ物語といえば、若きツタンカーメン王の棺にたむけられた矢車菊の話です。彼は18才で不慮の死をとげ、2000点以上の財宝とともに棺に納められました。3000年後に発掘された時、棺の上にあったのは数本の矢車菊。2つ年上のアンケセナーメン妃が彼の死後の世界での幸せを願ってたむけた花です。王としての地位を持ちながらも、年若い者同士が求めた幸せはささやかでどこにでもあるような素朴なものだったのでしょう。花は、時を飛び越えて感情も共有できるものを持っています。



