No.374　シデコブシ（ヒメコブシ）
少し前に紹介したのは白いシデコブシでしたが、今日は薄桃色です。花びら全体が色づいているわけはなく、真ん中に入った赤紫のひと筆が薄くどこまでもにじんで作った色彩です。シデコブシは日本の固有種で、愛知・岐阜・三重県の限られた場所にある自生個体群は絶滅危惧種にも指定されています。写真のものは庭木として園芸改良されたものです。暖かそうな毛で覆われた蕾には、「外套（がいとう）」という古びた言葉が似合います。寒い時期には、この少し野暮ったい外套に守られて眠り、春になるとお礼返しをするかのように美しい姿で風になびきます。花びらの中心は和菓子のような精緻な作りで、枝を手折れば清涼な香りまでしてきます。どこをとっても美しい花です。